市丸の問いに答えられない。

の思考が付いて行けてない。


さえも


何故自分の口から出たのか




分からないのだから。

































                                

もうひとつの世界

*第一章*





























「自分でも分からんの?」

「…はい……」

「そっか…不思議なコトがあるんやなァ」

「…はい…」

「ほな、ぼくの名前も知ってもらったトコやし…ぼくはそろそろ行くで」

「…え…?」

「戻らなあかんのやァ。仕事やからな★」


















市丸独特の、口元を上手く吊り上げる笑顔。


はたから見れば明るいが


実際は怪しさを秘めている。



『行く』と告げられた

どこか名残惜しそうに市丸を見る。



すると市丸は、

に近付き、ぽんぽんと頭を撫でる。


大きな手が、の髪の毛を乱す。





















「ぼくはまた来るから、安心しィ」

「……待って……」

「ん?」

「……あたしも行きたい…!」

「…!」















は、力強い目で市丸を見上げた。


ぎゅっと拳を握り、

不安を押し殺そうとしている。


不安定なまま行かせたくはないが、

市丸は本心では一緒に行って欲しかった。


には

どこか昔の懐かしさを思い出される。




の頭から手を離し

腰にある刀に手を伸ばす。



そして


一瞬の速さで抜き、





の首に切っ先を向けた。
























ザァッという木々の枝が、大きく鳴いた。






































「……ココでキミを殺すコトと同じなんやで?」

「…構わない。」

「……二度と戻って来ないんやで?それでもえぇ「あたしは構わない!」





























サラサラと

葉っぱが歌う。


ふたりの場所だけ時が止まったかのように思える。



市丸は切っ先を向けたまま


は真っ直ぐ市丸を見つめるまま。





堅い堅いの意志。




そう教えるかのような眼差し。







市丸はふっと微笑み


刀を下ろした。
































「…えぇよ。その代わり、こっちの世界からキミの存在自体を消すで」

「…出来るものなら。」


「……ホンマ…大した度胸やわ。」












キンッと刀を戻し、辺りを見回す。


誰もいないことを確認し

もう一度の方を向く。


先ほどと変わらない瞳。



少し距離を縮ませ



のおでこに人差し指を添えた。





























「強く目ェ瞑っとき。」

「…はぃ…!」

「…今から、ちゃんを連れてくからな?」

「?……ドコへ…?」

「…決まっとるやないか」























































































ソウルソサエティや。

























































































そう聞こえたのは遠い昔のよう。


の身体は

宙に浮いたような感覚になる。


遠ざかる意識。


眩しいくらいの光。



足の感覚がなくなり、次第には身体が動かなくなる。

麻痺しているように思える。



怖さと不安の中




は固く目を閉じ、現実に別れを告げた。




















































































もう二度と帰って来ない。と。




























































                           



        




























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